いつも見かける一軒家が、今日だけなんだか様子が違う。
近づいてみると柱時計の音とともにドアがあき、
シルクハットを被った音とが
「さぁさぁ寄ってらっしゃい見てらっしゃい、
お代は後で結構だ」とニヤリと笑う。
誘われるままに席につくと、カーテンの向こうに
ダンサーや手品師、人形やオブジェが現れては
踊り、歌い、演奏し、愉快で奇っ怪な見世物を繰り広げた。
あっという間にショーが終わって外に出ると、バタンとドアが
閉められて、さっきまでの喧騒は噓のよう。
次の日もう一度訪ねてみると、家はいつもの様子に戻っており、
中はもぬけの殻だった。
あれは夢かと思っていると、ある日一通の手紙が届く。
「先日は起こしいただきありがとう。またおあいしましょう。
山猫団拝」
住宅街の一軒家に円形の舞台と 覗き式個室の客席を設け、 チラシも撒かず、口コミとSNSで案内状を手にした120人に向けて、 ひっそりと公演が行われた。
ライブ・パフォーマンスを見るという行為は、通常大勢の人と同時に見るという パブリックな行為であるが、それを誰ともシェアできない個人的でプライベートな体験にするため、観客を1度に10名に限定し、客席の間も区切り、カーテン越しにステージを見る事で 「ステージを見ている人を見ている人は誰もいない」状態を作り出す。
観客は至近距離でステージを見ながらも、演者や他人の目を気にする事なく自由にステージを鑑賞できる。
「見る」「見られる」という行為を純化する事で緻密なコミュニケーションを図るための壮大な装置。
「山猫団、あらわる」
於:立川ギャラリーセプチマ
2013年5月24日~27日
全12回公演